暗号資産と仮想通貨の最新規制動向|2025年FATF新報告書で世界が注目する規制強化ポイントを解説

はじめに:暗号資産(仮想通貨)とは

暗号資産と仮想通貨のちがい

暗号資産は、インターネット上で使えるデジタルマネーのひとつです。

以前は「仮想通貨」と呼ばれていましたが、2019年からは「暗号資産」という呼び名が一般的になりました。

この呼び方の変更は、法律上の位置づけや利用方法の多様化が背景にあると考えられます。

ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産は、銀行や政府が発行しているわけではありません。

これらは、複雑な計算(ブロックチェーン技術など)を利用して、インターネット上のネットワーク全体で分散して管理されています。

この仕組みのおかげで、国や地域に関係なく、だれでも取引に参加できます。

また、暗号資産は自由度が高く、国際的な送金もカンタンにできるのが特徴です。

 

 

暗号資産の利用方法

利用者は、パソコンやスマートフォンを使って、暗号資産の送金や受け取りをカンタンに行うことができます。

国内外の知人や家族への送金もスピーディーにできるため、利便性が高い点がポイントです。

最近では、ネットショップや飲食店の一部でも、暗号資産を決済手段として導入する事例がふえています。

また、投資家や個人が資産運用や投資目的で暗号資産を活用するケースも多くなっています。

暗号資産は価格の変動(ボラティリティ)が大きいため、短期間での値上がりや値下がりをねらった取引も活発です。

ただし、暗号資産の価値は短期間で大きく変動するリスクがあるため、利用の際はじゅうぶんな注意が必要です。

 

FATF(金融活動作業部会)とは

FATFの役割

FATF(金融活動作業部会)は、国際的な金融犯罪をふせぐために設立された国際組織です。

1989年に発足し、世界各国の政府が協力して、マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与をふせぐための基準やルールづくりを進めています。

FATFには40か国以上が加盟しており、犯罪による収益が銀行や金融システムを通じて流通しないように監視する役割も担っています。

さらに、各国に対して法整備や規制の強化、監督体制の整備をうながす活動もおこなっています。

参加国・地域の概要

FATFの主なメンバーには、日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国などが含まれています。

FATFが定めたガイドラインは、加盟国だけでなく、加盟していない国や地域でも参考にされています。

現在では、約200の国や地域でFATFの基準が使われています。

また、FATFによる規制の対象は銀行や証券会社だけでなく、暗号資産を取り扱う事業者にも広がっています。

これにより、グローバルな規制強化の動きが強まっています。

 

2025年6月26日:FATF新報告書の発表

報告書の主なポイント

2025年6月26日、FATFは新しい報告書を発表しました。

この報告書では、最近、暗号資産を使ったマネーロンダリングやその他の犯罪行為が急増している現状について、FATFが強い懸念を示しています。

FATFは、各国が協力して、暗号資産への規制や監視体制をさらに強化する必要があると指摘しました。

FATF加盟国への要請

今回の報告書で、FATFは特に以下の点を強調しています。

  • 不正なウォレットを使った大きな資金移動が目立っていること 
  • 多くの国で、規制や監督体制がじゅうぶんに整っていないこと 
  • 国ごとに異なるルールが存在し、犯罪組織による悪用リスクが高まっていること 

これらの課題をふまえ、FATFはすべての加盟国が統一された基準にしたがって監督や規制を徹底し、国際的な連携を強化することが重要だと訴えています。

 

なぜ暗号資産に規制が必要なのか

暗号資産の特性とリスク

暗号資産は、世界中でスピーディーに送金できるという利便性があります。

一方で、「匿名性が高い」「国境をこえて取引しやすい」といった特徴ももっています。

これらの特性があるため、利便性と同時に犯罪への悪用リスクも高まっています。

銀行口座で資金を動かす場合は、本人確認(KYC:本人確認手続き)が必須です。

しかし、暗号資産のウォレットでは、じゅうぶんな本人確認が義務づけられていないケースもあります。

犯罪利用されやすい理由

  • 現金と同じように取引の追跡がむずかしい場合がある 
  • インターネット環境があれば、世界中で利用できる 
  • 匿名で使えるサービスが多い 

このような暗号資産の特徴によって、マネーロンダリングやテロ資金供与など犯罪資金のやりとりに悪用される事例がふえています。

今後も規制の強化が求められると考えられます。

 

2024年の現状:不正ウォレットによる510億ドル規模の資金移動

「不正ウォレット」とはなにか

ウォレットは、暗号資産(仮想通貨)を保管したり送受信するためのデジタル上の財布のことです。

多くの利用者がスマートフォンアプリやパソコン用ソフトを使っており、資産管理や取引の際に欠かせない存在となっています。

一方で、ウォレットには正規のものだけでなく、不正ウォレットも存在します。

不正ウォレットは、犯罪組織や違法行為を目的とした利用が特徴です。

こうした不正ウォレットは、本人確認が不要な場合が多く、だれでもカンタンに作成できる傾向があります。

そのため、犯罪者が身元をかくしたまま巨額の資金を動かす手段として使われやすいと考えられます。

不正ウォレットの利用目的と利用者

2024年、FATF(金融活動作業部会)は、不正ウォレットが世界全体で合計510億ドル(日本円で約8兆円超)の資金を受け取ったと発表しました。

この金額は過去最大規模とみられています。

特に北朝鮮のハッカー集団やテロ組織、麻薬密売グループなどが暗号資産の匿名性を悪用し、資金調達やマネーロンダリング(資金洗浄)に利用している実態が明らかになっています。

北朝鮮は国際的な制裁を受けており、通常の金融システムを使った資金移動がむずかしい状況です。

そのため、北朝鮮の組織はサイバー攻撃や違法取引で得た暗号資産を活用し、ひそかに資金を移すケースが目立っています。

510億ドルという金額の規模感

510億ドルという資金規模は、日本国内のすべての中学校が1年間に使う教育予算の合計を大きく上回る水準です。

正体不明の個人や組織による多額の資金移動は、世界的にも深刻な問題として、各国の金融当局やFATFが強く警戒しています。

 

ステーブルコインと金融犯罪

ステーブルコインとは

ステーブルコインは、「価値が安定している暗号資産」として知られています。

たとえば、1枚=1ドルのように、アメリカドルや日本円など法定通貨と価値が連動するよう設計されています。

主なステーブルコインには「USDT(テザー)」や「USDC」などがあります。

犯罪への悪用実態

一般的な暗号資産は価格変動が大きいのが特徴ですが、ステーブルコインは価値が安定しているため、犯罪組織が多額の資金を短期間で安全に移動させる手段として使うケースが増えています。

具体的には、盗まれたビットコインを一度ステーブルコインに交換し、そこから他のウォレットや取引所へ送金する手口が多発しています。

こうした資金移動は「資金洗浄(マネーロンダリング)」の一種であり、FATFもステーブルコインの動きを厳重に監視しています。

 

世界の規制対応状況

FATF基準への各国の対応状況

FATFが推奨する「暗号資産への厳格な規制」に完全対応している国や地域は、世界138か国・地域のうち、わずか約40にとどまっています。

そのほか多くの国や地域では、暗号資産犯罪を防ぐための法律や監督体制がじゅうぶんに整っていません。

こうした規制の未整備が、犯罪の温床となるリスクを高めていると指摘されています。

日本および世界の最新動向

日本政府は、暗号資産に関するルール整備や監督の強化を早い段階から進めてきました。

たとえば、暗号資産取扱事業者には本人確認の徹底や、疑わしい取引の通報義務などが課されています。

しかし、世界全体を見ると、いまだに規制がゆるい国や、ほとんど規制がない地域も多く残っています。

FATFは各国に対し、「統一された基準による厳格な規制と監督」が必要だと強くうったえています。

今後の国際社会にとって、共通ルールの整備が重要な課題になると見込まれます。

 

安全運用のためのポイント

取引所やウォレットの選び方

利用者が暗号資産を安全に使うためには、「信頼性の高い取引所」や「公式ウォレット」を選ぶことが大切です。

取引所は、円やドルといった法定通貨と暗号資産(仮想通貨)を交換できるサービスのことです。

安全性の高い取引所やウォレットでは、かならず本人確認(KYC:本人確認手続き)が実施され、登録時に身分証明書や顔写真の提出が求められます。

この本人確認は、利用者の資産を守るために必要とされています。

一方で、インターネット上には「本人確認なし」「匿名ですぐ利用できる」と宣伝する取引所やサービスも存在します。

こうしたサービスは犯罪に悪用されるリスクが高く、万が一トラブルが発生した場合、適切な相談先がないケースもあります。

金融庁などの公的機関に認可された取引所を利用することが、安全確保の面からおすすめです。

 

安全に利用するためのポイント

  • パスワードの管理
    暗号資産ウォレットや取引所のパスワードは他人に教えず、厳重に管理することが大切です。 
  • 「もうかる話」への注意
    SNSやメールで「暗号資産で必ずもうかる」といった勧誘があった場合、安易に信用しないことが重要です。詐欺の可能性が高いと考えられます。 
  • 不明なアプリの回避
    インターネット上には偽アプリも存在するため、アプリは必ず公式サイトからダウンロードすることが安全対策になります。 

 

よくある質問Q&A

Q1:暗号資産は危険なのか?

暗号資産そのものが必ずしも危険というわけではありません。

しかし、まちがった使い方や信頼性の低いサービスを利用した場合、詐欺や盗難などのリスクがあります。

信頼できる取引所やウォレットを選び、基本的な知識を身につけることで、多くのリスクは回避できるといえるでしょう。

Q2:どのように安全に使うことができるか?

本人確認がしっかり行われている取引所や公式ウォレットを利用することが安全対策の基本です。

パスワードや秘密鍵の管理も非常に大切です。

また、「絶対にもうかる」といった話には注意が必要です。

不安を感じた場合は、かならず家族や専門機関に相談することをおすすめします。

Q3:規制が進むとどのような変化があるのか?

規制が強化されることで、犯罪組織による暗号資産の悪用はしにくくなります。

その結果、利用者が安心してサービスを使える環境が整い、社会全体の信頼性向上につながると考えられます。

ルールを守る利用者にとっては、プラスの変化になるでしょう。

Q4:犯罪に巻き込まれないためにはどうすればよいか?

知らない人からの誘いには応じないことが基本です。

「無料で暗号資産がもらえる」「短期間で大きな利益が得られる」といった話にも警戒が必要です。

家族とよく相談し、慎重に判断する姿勢が大切です。

 

まとめ:安心・安全な暗号資産の未来へ

暗号資産はインターネット時代の新しいお金として、世界中で利用が広がっています。

一方で、犯罪への悪用リスクも増えています。

FATF(金融活動作業部会)など国際機関は、こうした課題に対応するため、各国に規制の強化や協力を求めています。

とくに2024年には、不正ウォレットを通じた資金流出が510億ドルに達したと報告されました。

この問題は、すべての利用者にとって身近な課題です。

安全な運用には、正しい知識とルールを守ることが不可欠です。

今後、国際的な対策や共通ルールの整備が進むことで、暗号資産はより安全で便利なものになると予想されます。

引き続き最新情報に注意を払い、テクノロジーの進化をうまく活用していく姿勢が大切です。

 

金融庁|暗号資産(仮想通貨)に関する注意喚起と制度案内

 

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