暗号資産(仮想通貨)規制強化と最新の世界的動向をやさしく解説

2025年6月、国際的な金融犯罪対策機関「FATF」は暗号資産(仮想通貨)の規制強化を加盟国に呼びかける新しい報告書を発表しました。この記事では、不正ウォレットの増加や世界の対策状況、そして安全に暗号資産を使うためのポイントを中学生にもわかりやすく解説します。

 

 

はじめに:暗号資産(仮想通貨)とは

暗号資産と仮想通貨の違い

暗号資産とは、インターネット上で使用できるデジタルマネーの一種です。かつて日本国内では「仮想通貨」と呼ばれていましたが、2019年以降は「暗号資産」という呼び方が一般的になりました。
この呼称変更の背景には、法律上の位置付けや利用方法が多様化したことが影響していると考えられます。

ビットコインやイーサリアムといった暗号資産は、銀行や政府機関が発行しているわけではありません。これらは、複雑な計算(ブロックチェーン技術など)によって、インターネット上のネットワーク全体で分散管理されています。この仕組みにより、国や地域に関係なく、誰でも取引に参加できます。
また、暗号資産には自由度が高く、国際的な送金も容易という特徴があります。

暗号資産の利用方法

消費者は、パソコンやスマートフォンを利用することで、暗号資産の送金や受け取りを簡単に行うことができます。国内外の知人や家族への送金が迅速に実施できる点も利便性の一つです。
一部のネットショップや飲食店などでは、暗号資産を決済手段として採用する事例が増えています。

また、投資家や個人は、暗号資産を投資や資産運用の手段として活用するケースも多い傾向です。暗号資産は価格変動(ボラティリティ)が大きいため、短期間での値上がりや値下がりを期待した売買も活発に行われています。
ただし、暗号資産の価値は短期間で大きく変動するリスクがあるため、利用時には十分な注意が必要です。

 

FATF(金融活動作業部会)とは

FATFの役割

FATF(金融活動作業部会)は、国際的な金融犯罪を防止するために設立された組織です。1989年に発足し、世界各国の政府が協力して、マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与を防ぐための基準やルール作りを進めています。
FATFには40カ国以上が加盟しており、犯罪による収益が銀行や金融システムを通じて流通しないよう監視する役割を担っています。さらに、各国に対して法整備や規制の強化、監督体制の整備を促す活動も続けています。

参加国・地域の概要

FATFの主要メンバーには、日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国などが含まれています。FATFが定めるガイドラインは、加盟国以外の国や地域でも参考とされており、現在では約200の国や地域で基準が利用されています。
また、FATFの規制は銀行や証券会社だけでなく、暗号資産取扱事業者にも拡大しています。これにより、グローバルな規制強化の動きが進んでいる状況です。

 

2025年6月26日:FATF新報告書の発表

報告書の主なポイント

2025年6月26日、FATFは新たな報告書を公表しました。この報告書では、近年暗号資産を利用したマネーロンダリングやその他の犯罪行為が急増している現状について、FATFが強い懸念を表明しています。
FATFは、各国が協力し、暗号資産に対する規制や監視体制をさらに強化する必要があるとの認識を示しました。

FATF加盟国への要請

今回の報告書で、FATFは以下の点を特に強調しています。

  • 不正なウォレットによる巨額の資金移動が顕著になっていること

  • 多くの国において、規制や監督体制が十分に整っていない現状が見受けられること

  • 国ごとに異なるルールの存在が、犯罪組織による悪用リスクを高めていること

これらの課題を受け、FATFは全ての加盟国が統一された基準に基づき監督や規制を徹底し、国際的な連携を強化することが重要だと訴えています。

 

なぜ暗号資産に規制が必要なのか

暗号資産の特性とリスク

暗号資産は、世界中で迅速に送金できるという利便性を持っています。一方で、「匿名性が高い」「国境を越えて取引しやすい」といった特徴も備えています。
これらの特性により、利便性と同時に犯罪への悪用リスクが高まっていると見られています。

銀行口座で資金を移動する際には、本人確認(KYC:本人確認手続き)が必須です。しかし、暗号資産ウォレットにおいては、十分な本人確認が義務付けられていないケースも存在します。

犯罪利用されやすい理由

  • 現金と同様に取引の追跡が困難な場合があること

  • インターネット環境があれば、世界中で利用可能なこと

  • 匿名で利用できるサービスが多いこと

こうした暗号資産の特徴により、マネーロンダリングやテロ資金供与など犯罪資金のやりとりに悪用される事例が増加しています。今後も規制の強化が求められると考えられています。

 

2024年の現状:不正ウォレットによる510億ドル規模の資金移動

「不正ウォレット」とは何か

ウォレットとは、暗号資産(仮想通貨)を保管や送受信のために使われるデジタル上の財布を指します。多くの消費者がスマートフォンアプリやパソコン用ソフトとして利用しており、資産管理や取引の際に不可欠な存在となっています。一方で、ウォレットには正規のものだけでなく、不正ウォレットも存在します。不正ウォレットは、犯罪組織や違法行為を目的とした利用が特徴です。
こうした不正ウォレットは、本人確認が不要な場合が多く、誰でも簡単に作成できる傾向があります。そのため、犯罪者が身元を隠したまま巨額の資金を移動させる手段として利用されやすいと考えられます。

不正ウォレットの利用目的と利用者

2024年、FATF(金融活動作業部会)は、不正ウォレットが世界全体で合計510億ドル(日本円で約8兆円超)もの資金を受け取ったと公表しました。この金額は過去最大規模であると見られています。特に北朝鮮のハッカー集団やテロ組織、麻薬密売グループなどが暗号資産の匿名性を悪用し、資金調達やマネーロンダリング(資金洗浄)に利用している実態が明らかになっています。
北朝鮮は国際的な制裁を受けており、通常の金融システムを使った資金移動が困難です。そのため、北朝鮮の組織はサイバー攻撃や違法取引を通じて得た暗号資産を活用し、秘密裏に資金を移動するケースが目立つようになっています。

510億ドルという金額の規模感

510億ドルという資金規模は、日本国内のすべての中学校が1年間に使う教育予算の合計を大きく上回る水準です。正体不明の個人や組織による多額の資金移動は、世界的にも深刻な問題として各国の金融当局やFATFが強く警戒しています。

 

ステーブルコインと金融犯罪

ステーブルコインとは

ステーブルコインは、「価値が安定している暗号資産」と定義されます。たとえば1枚=1ドルといった形で、アメリカドルや日本円など法定通貨と価値を連動させて設計されています。主要なステーブルコインには「USDT(テザー)」や「USDC」などが挙げられます。

犯罪への悪用実態

一般的な暗号資産は価格変動が大きいですが、ステーブルコインは価値が安定している点が特長です。この安定性を理由に、犯罪組織は多額の資金を短期間で安全に移動させる手段としてステーブルコインを選ぶ傾向があります。
具体的には、盗まれたビットコインを一度ステーブルコインへ交換し、そこから他のウォレットや取引所へ送金する手法が多発しています。こうした資金移動は「資金洗浄(マネーロンダリング)」の一形態であり、FATFもステーブルコインの動向を厳重に監視しています。

 

世界の規制対応状況

FATF基準への各国の対応状況

FATFが推奨する「暗号資産への厳格な規制」に完全に対応している国や地域は、世界138カ国・地域のうち、わずか約40にとどまっています。残りの多くの国や地域では、暗号資産犯罪を防止するための法律や監督体制が十分に整っていません。この規制の未整備が、犯罪の温床となるリスクを高めていると指摘されています。

日本および世界の最新動向

日本政府は、暗号資産に関するルール整備や監督の強化を早い段階から推進しています。具体的には、暗号資産取扱事業者に対し、本人確認の徹底や疑わしい取引の通報義務を課してきました。
しかし、世界全体では、依然として規制が緩い国や、ほとんど規制が存在しない地域も多く残されています。FATFは各国に対し、「統一された基準による厳格な規制と監督」が必要だと強く要請しています。今後の国際社会にとって、共通ルールの整備が重要な課題になると見込まれています

 

安全運用のためのポイント

取引所やウォレットの選び方

消費者が暗号資産を安全に利用するためには、「信頼性の高い取引所」や「公式ウォレット」を選択することが重要です。取引所とは、円やドルといった法定通貨と暗号資産(仮想通貨)を交換できるサービスを指します。安全性の高い取引所やウォレットでは、必ず本人確認(KYC:本人確認手続き)が実施され、登録時には身分証明書や顔写真の提出が求められます。
この本人確認は、利用者の資産を守るために必要とされています。

一方で、インターネット上には「本人確認なし」「匿名ですぐ利用可能」と宣伝する取引所やサービスも存在しています。こうしたサービスは犯罪に悪用されるリスクが高く、万が一トラブルが発生した場合、適切な相談先がないケースも見られます。
金融庁などの公的機関に認可された取引所の利用が、安全確保の観点から推奨されています。

 

安全に利用するためのポイント

  • パスワードの管理
    暗号資産ウォレットや取引所のパスワードは他人に教えず、厳重に管理する必要があります。

  • 「もうかる話」への注意
    SNSやメールで「暗号資産で必ず儲かる」といった勧誘があった場合、安易に信用しないことが大切です。詐欺の可能性が高いと考えられます。

  • 不明なアプリの回避
    インターネット上には偽アプリが存在するため、アプリは必ず公式サイトからダウンロードすることが安全対策につながります。

 

よくある質問Q&A

Q1:暗号資産は危険なのか?

暗号資産自体が必ずしも危険というわけではありません。しかし、誤った使い方や信頼性の低いサービスを利用した場合、詐欺や盗難などのリスクが生じます。
信頼できる取引所やウォレットを利用し、基本的な知識を身につけることで、多くのリスクは回避できると考えられます。

Q2:どのように安全に使うことができるか?

本人確認が徹底されている取引所や公式ウォレットの利用が安全対策の基本です。パスワードや秘密鍵の管理も非常に重要とされています。また、「絶対にもうかる」といった話には注意が必要です。不安を感じた場合は、必ず家族や専門機関へ相談することが推奨されています。

Q3:規制が進むとどのような変化があるのか?

規制の強化によって、犯罪組織による暗号資産の悪用は困難になります。これにより、利用者が安心してサービスを利用できる環境が整い、社会全体の信頼性向上につながると見込まれています。
ルールを守る利用者にとっては、プラスの変化となる可能性が高いでしょう。

Q4:犯罪に巻き込まれないためにはどうすればよいか?

知らない人からの誘いには応じないことが基本です。「無料で暗号資産がもらえる」「短期間で大きな利益が得られる」といった話にも警戒が必要です。家族とよく相談し、慎重に判断する姿勢が重要とされています。

 

まとめ:安心・安全な暗号資産の未来へ

暗号資産はインターネット時代の新たなお金として、世界中で利用が拡大しています。しかし一方で、犯罪への悪用リスクも増加傾向にあります。FATF(金融活動作業部会)など国際機関は、こうした課題に対応するため、各国に対し規制の強化や協力を要請しています。

特に2024年には、不正ウォレットを介した資金流出が510億ドルに達したと報告されました。この問題は、あらゆる利用者にとって身近な課題と位置付けられます。安全な運用には、正しい知識とルールの遵守が不可欠です。

今後、国際的な対策や共通ルールの整備が進むことで、暗号資産はより安全で便利なものへと進化していくと予想されます。
引き続き最新情報に注意を払い、テクノロジーの進展を適切に活用していく姿勢が重要だと考えられます。

 

暗号資産(仮想通貨)を利用する皆さまへ(金融庁公式サイト)

 

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